最近アメリカのリベラルメディア代表格のハフィントン・ポストが創刊して、結構話題のようですね。朝日新聞と連携を取っているそうで、朝日新聞の電子版と何が違うんだろうと思われる方も結構いると思いますが、あんまり変わらなそうですね。
ニュースメディアというよりも、有識者のブログ記事や投稿がメインだそうで、そんなサイト他に沢山あるんですが、その中で面白い記事がありました。
コーク兄弟は何者?ということで、コーク兄弟がアメリカのニュースメディアを買収しようとする背景を解説する記事です。
しかし、日本人でコーク兄弟と聞いてピンとくる人なんであまりいないでしょう。という筆者も、アメリカのティーパーティー運動の活動資金をコーク兄弟が出しているという報道を見て初めて知った位ですから・・・
中岡望さんの記事もあるんですが、 文章読んでコーク兄弟について詳しく知りたい人は、「The CAMPAIN」という映画を観ると良いと思います。
この映画は選挙活動コメディで、アメリカの政治活動や過激な選挙活動を皮肉った映画なのですが、コーク兄弟をモチーフにしたモッチ兄弟という人物が出てきます。
出演者は、ウィル・フェレルとザック・ガリフィアナキス。ノースカロライナ州の選挙で共和党下院議員として再選を目指すキャム・ブレイディ(ウィル・フェレル)と、無名であったが大富豪のモッチ兄弟を取り込んでブレイディに対抗しようとするマーク・ハギンス(ザック・・・)が引き起こすドタバタコメディですが、映画としては面白いかと聞かれればノーコメントですw。
コーク兄弟は、保守派の中でも最右翼で、石油化学産業のオーナーです。莫大な資金力を持ち、共和党を支持し、オバマ政権にとっては天敵です。基本的に民主党のリベラル政策に反発し、国民皆保険創設に反対、金持ち増税は不当であり累進課税制度をやめるべきだという経済的保守的な思想を持っています。オバマ政権のリベラル政策は、コーク兄弟をはじめとした巨大資本や裕福な人々にとって不利なので、共和党立て直しのために立ち上がった保守主義の勇者であり、過激な政治活動にも躊躇いがありません。
オバマ政権のスキャンダルになりそうで、現代版ウォーターゲート事件になりそうなIRSの保守団体狙い撃ち事件では、ブッシュ政権の選挙顧問であったカール・ローブが運営する政治団体と、コーク兄弟が運営する政治団体が標的になったので、オバマ政権にとって天敵である政治団体の資金的な流れを摘みたいという意図があった事は明白です。
保守系政治団体の狙いは、国民皆保険に反対すること、金持ち増税の阻止、政府は市場に介入しない等、オバマ政権が推進しようとする政策の対極にあり、徹底的なオバマバッシングを行っています。
日本版ハフィントン・ ポストでコーク兄弟について取り上げたのは、アメリカにおける保守とリベラルの対立を日本の読者に理解してほしいという意図があったと思われる。ハフィントン・ポストは、リベラル側のメディアで、コーク兄弟は批判の的なのです。
映画でも、モッチ兄弟の意図が驚愕の形で明かされます。そんなの絶対ありえないだろって突っ込みたくなるほどのシナリオでした。選挙活動も、キャム・ブレイディ候補とマーク・ハギンス候補の中傷合戦で、お互い「キリスト大好きだ~ 」しか言ってないです。あとは、「奴は共産主義者だ」とか、「私はアメリカを信じる」とか、よくあるレッテル張りやスローガン合戦です。
基本、いかに相手を罠にはめて陥れるかだけ。政治家なら、政策を議論しろって思うのですが、映画の中ではそんなシーンは出てきませんでした。CMとか、キャム・ブレイディがマーク・ハギンスの奥さんを抱こうとして盗撮。盗撮した動画を編集してCMに流してライバル候補を中傷しようとするシーンまであります。(全身ハダカで、重要な部分はモザイクが・・・w)
これがアメリカの政治活動なんですね。特に面白かったのは、マーク・ハギンスが銃でキャム・ブレイディを銃で撃っちゃうシーン。これは、ディック・チェイニーが銃で友人を撃ってしまったことに対するパロディかと・・・。
基本映画に出てくるギャグは、実際にアメリカの政治活動で起きた事件をパロディにしているので、すごく茶番です。過激に脚色するのも、実際に起きた事件だからこそ、リアリティを追及するよりわざと下らない演出にした方が製作側の都合が良かったんでしょう。
映画としての完成度はちょっと・・・てところはありますが、コーク兄弟は映画のモチーフになる程アメリカでは重要な人物なのです。ハフィントン・ポストは、コーク兄弟を紹介するなら、「The CAMPAIN」を絡めて説明すればよかったのにと思いましたので、僕がやりました。
町山さんの解説だけ聞けば、ハフィントン・ポストの記事よりコーク兄弟の事学べると思いますよ。 日本劇場未公開なのも頷けます・・・。改めて言うと、町山さんの解説で十分です。
2013年5月23日木曜日
2013年4月21日日曜日
スピルバーグ監督作「リンカーン」が難しくてモヤモヤしたら、「ミルク」を飲みましょう。
今週金曜日に公開されたスピルバーグ監督最新作の「リンカーン」、評価が二分されているような気がします。
スピルバーグ作品らしくないとか、シナリオが良く分からなかったから、民主主義のリーダーとは何か学べた等の感想をツイッターで流れてますね。
リンカーンは、スピルバーグ作品史上最も政治的に深い映画であり、修正憲法13条を可決させる為に、南部の利害を代表する民主党議員の中から、強引な手法を使って懐柔するプロセスに焦点が当てられており、リンカーン自体に共感するのが難しいかもしれません。
もしリンカーンを見て、何かしらモヤモヤしたモノが心の中に残るなら、1977年にサンフランシスコ市議員に当選し、自身も同性愛者であり、セクシャルマイノリティの地位向上に努めたハーヴェイ・ミルクを映画化したガス・ヴァン・サント監督、ショーン・ペン主演の「ミルク」をオススメします。
なぜ、この映画を紹介するかというと、スピルバーグ監督の「リンカーン」は、トニー・クシュナーが脚本を担当しているからです。スピルバーグとトニー・クシュナーと言えば、ミュンヘンオリンピックでイスラエル人選手がアラブ系テロリストに殺され、その報復の為に強硬手段を取ったイスラエルを批判する「ミュンヘン」が有名です。2005年に公開された映画で、政治的比喩としては9.11同時多発テロの報復として、イラクを攻撃したブッシュ政権に対する批判映画として作られました。
またトニー・クシュナー自身は同性愛者であり、「エンジェルス・イン・アメリカ」というニューヨークを舞台にした同性愛者の人間ドラマの原作者としても有名。
スピルバーグとトニー・クシュナーがタッグを組んだ映画は、アメリカ社会に対する問い掛けのような映画になるのは必然的で、特に同性愛者に対して厳しい態度を取る共和党に対して批判的映画になってしまうのは避けられません。
従って「リンカーン」自体は、アメリカ史やキリスト教、南北戦争時の状況等を理解しつつ、製作者の背景を知らないと、映画に入り込みづらいと言えるのです。
「ミルク」なら、アメリカ史に詳しくなくとも、セクシャルマイノリティに対する偏見と闘った偉大な政治家として、自らが同性愛者である事を公表し、様々な苦悩、葛藤を抱えながら一人の人間として生きたハーヴェイ・ミルクに共感出来ると思います。解説はこちら
アメリカにおいて、同性愛者に対する差別が激しい理由の一つはキリスト教です。聖書においては、同性愛を禁止していると解釈できる記述があり、キリスト教福音派と呼ばれるプロテスタントの人々が、同性愛を毛嫌いしているからです。ミルクにおいては、キリスト教福音派の支持を受けた政治家と同性愛について議論するといったシーンがあります。
どの国でも、同性愛者、特にゲイに対する偏見は存在します。その偏見に宗教的価値観が絡むと差別が過熱してしまうのです。同性愛者の人々は、自分のアイデンティティを隠しながら生きるしかなかった人々の希望こそ、ハーヴェイ・ミルクそのものでした。
志半ばで、ミルクはダン・ホワイトという同僚議員に殺されてしまうのですが、そのシーンも「ミルク」にあります。ミルクが暗殺された後の追悼集会のシーンは涙なしには見れない名シーンです。同性愛者の地位向上に全てを捧げた、セクシャルマイノリティ―にとってのキリストになった瞬間でもあります。
この映画では、ミルクを殺害したダン・ホワイトの人間性について、明確に描かれるわけではないですが、さり気なく彼自身がミルクと同じ同性愛者だったのではないかと思わせるシーンがあります。彼自身の周りの環境が、自分自身のアイデンティティを偽り、結果的に、それが彼を追い詰めていったのではないかという製作者側の解釈でしょうか。
「エンジェルス・イン・アメリカ」でも、ロイ・コーンという実在の弁護士をアル・パチーノが演じています。ロイ・コーンは、赤狩り時代に権力を得た弁護士ですが、彼自身がゲイなのです。AIDSに感染してしまい、必死にゲイというセクシャリティーを隠し弁護士として死のうとするが、弁護士資格をはく奪されたことを知った後死んでいくという哀れな終りでした。
レーガン政権以降のアメリカの共和党は、キリスト教福音派が支持母体なので、同性愛者でありがながら共和党議員として、同性愛者に対する弾圧に手を貸していた人も実在しました。同性愛をテーマにした映画では、同性愛者として、自らのセクシャリティーを公表してマイノリティーの地位向上に努める人物と、自らのセクシャリティーを隠して、自分と同じマイノリティー弾圧に手を貸してしまう人物を対比させると、アメリカにとって非常に深いテーマを追求する映画になるのです。
自分の本当のアイデンティティを隠して生きていくという事は、自分を犠牲にするだけでなく、他人を犠牲にしてしまい、悲劇が生まれてしまうという私達が学ぶべき教訓でもあります。
もしリンカーンを見て、同じようなリーダーが苦悩しながら現実と戦っていくという映画を観たいと思ったら、ミルクをオススメします。
映画の中で、ハーヴェイ・ミルクが暗殺された後に最後に流れる台詞。
「私達は希望が必要だ。希望無き人生なんて、誰も生きていけないのだから。」
スピルバーグ作品らしくないとか、シナリオが良く分からなかったから、民主主義のリーダーとは何か学べた等の感想をツイッターで流れてますね。
リンカーンは、スピルバーグ作品史上最も政治的に深い映画であり、修正憲法13条を可決させる為に、南部の利害を代表する民主党議員の中から、強引な手法を使って懐柔するプロセスに焦点が当てられており、リンカーン自体に共感するのが難しいかもしれません。
もしリンカーンを見て、何かしらモヤモヤしたモノが心の中に残るなら、1977年にサンフランシスコ市議員に当選し、自身も同性愛者であり、セクシャルマイノリティの地位向上に努めたハーヴェイ・ミルクを映画化したガス・ヴァン・サント監督、ショーン・ペン主演の「ミルク」をオススメします。
なぜ、この映画を紹介するかというと、スピルバーグ監督の「リンカーン」は、トニー・クシュナーが脚本を担当しているからです。スピルバーグとトニー・クシュナーと言えば、ミュンヘンオリンピックでイスラエル人選手がアラブ系テロリストに殺され、その報復の為に強硬手段を取ったイスラエルを批判する「ミュンヘン」が有名です。2005年に公開された映画で、政治的比喩としては9.11同時多発テロの報復として、イラクを攻撃したブッシュ政権に対する批判映画として作られました。
またトニー・クシュナー自身は同性愛者であり、「エンジェルス・イン・アメリカ」というニューヨークを舞台にした同性愛者の人間ドラマの原作者としても有名。
スピルバーグとトニー・クシュナーがタッグを組んだ映画は、アメリカ社会に対する問い掛けのような映画になるのは必然的で、特に同性愛者に対して厳しい態度を取る共和党に対して批判的映画になってしまうのは避けられません。
従って「リンカーン」自体は、アメリカ史やキリスト教、南北戦争時の状況等を理解しつつ、製作者の背景を知らないと、映画に入り込みづらいと言えるのです。
「ミルク」なら、アメリカ史に詳しくなくとも、セクシャルマイノリティに対する偏見と闘った偉大な政治家として、自らが同性愛者である事を公表し、様々な苦悩、葛藤を抱えながら一人の人間として生きたハーヴェイ・ミルクに共感出来ると思います。解説はこちら
アメリカにおいて、同性愛者に対する差別が激しい理由の一つはキリスト教です。聖書においては、同性愛を禁止していると解釈できる記述があり、キリスト教福音派と呼ばれるプロテスタントの人々が、同性愛を毛嫌いしているからです。ミルクにおいては、キリスト教福音派の支持を受けた政治家と同性愛について議論するといったシーンがあります。
どの国でも、同性愛者、特にゲイに対する偏見は存在します。その偏見に宗教的価値観が絡むと差別が過熱してしまうのです。同性愛者の人々は、自分のアイデンティティを隠しながら生きるしかなかった人々の希望こそ、ハーヴェイ・ミルクそのものでした。
志半ばで、ミルクはダン・ホワイトという同僚議員に殺されてしまうのですが、そのシーンも「ミルク」にあります。ミルクが暗殺された後の追悼集会のシーンは涙なしには見れない名シーンです。同性愛者の地位向上に全てを捧げた、セクシャルマイノリティ―にとってのキリストになった瞬間でもあります。
この映画では、ミルクを殺害したダン・ホワイトの人間性について、明確に描かれるわけではないですが、さり気なく彼自身がミルクと同じ同性愛者だったのではないかと思わせるシーンがあります。彼自身の周りの環境が、自分自身のアイデンティティを偽り、結果的に、それが彼を追い詰めていったのではないかという製作者側の解釈でしょうか。
「エンジェルス・イン・アメリカ」でも、ロイ・コーンという実在の弁護士をアル・パチーノが演じています。ロイ・コーンは、赤狩り時代に権力を得た弁護士ですが、彼自身がゲイなのです。AIDSに感染してしまい、必死にゲイというセクシャリティーを隠し弁護士として死のうとするが、弁護士資格をはく奪されたことを知った後死んでいくという哀れな終りでした。
レーガン政権以降のアメリカの共和党は、キリスト教福音派が支持母体なので、同性愛者でありがながら共和党議員として、同性愛者に対する弾圧に手を貸していた人も実在しました。同性愛をテーマにした映画では、同性愛者として、自らのセクシャリティーを公表してマイノリティーの地位向上に努める人物と、自らのセクシャリティーを隠して、自分と同じマイノリティー弾圧に手を貸してしまう人物を対比させると、アメリカにとって非常に深いテーマを追求する映画になるのです。
自分の本当のアイデンティティを隠して生きていくという事は、自分を犠牲にするだけでなく、他人を犠牲にしてしまい、悲劇が生まれてしまうという私達が学ぶべき教訓でもあります。
もしリンカーンを見て、同じようなリーダーが苦悩しながら現実と戦っていくという映画を観たいと思ったら、ミルクをオススメします。
映画の中で、ハーヴェイ・ミルクが暗殺された後に最後に流れる台詞。
「私達は希望が必要だ。希望無き人生なんて、誰も生きていけないのだから。」
2013年4月19日金曜日
アルゴの裏側を理解する為に「ミッシング」
スピルバーグのリンカーンを追い抜いて、今年のアカデミー作品賞に輝いたアルゴ。ベン・アフレックは監督3作目でアカデミー作品賞取るとは、グッド・ウィル・ハンティングで脚本や演技が絶賛されて以降、色々紆余曲折がありましたが、やはり天才なのですね。
そんなアルゴ、メタルギアシリーズの小島秀夫さんの2012年で一番面白かった映画と評価するだけあります。ライジングより面白・・・ry
イラン・イスラム革命勃発によって、アメリカ大使館職員がイラン国内に取り残されてしまい、CIAのエージェントでトニー・メンデス扮するベン・アフレックが、カナダ人として映画撮影を装い、大使館職員を救出したという実際の事件を元に撮影されたアルゴ。
そんなアルゴをより深く理解するのにオススメな映画、コスタ・ガブラス監督の「ミッシング」をご紹介します。
ミッシングは、1973年のチリ、ピノチェト率いる軍事勢力がクーデターによって、アジェンデ政権を転覆させた事件を元に作られた作品です。
チリの軍事クーデターによって、アメリカ人青年のチャールズ・ホルマンという実在の人物が突然失踪し、その家族が失踪した息子の行方を追うが、そこにはCIAの思惑が見え隠れしていたという怖い怖いシナリオ。
映画の中では、息子の行方を必死に追う父親が、息子が失踪した件についてCIAが関わっているのではないかと勘付きます。しかし、劇中ではCIAが実際にクーデターに関わっていると視聴者の思わせる演出がありますが、本当にCIAが関わっていたのかは明確に描かれません。クーデターと、CIAの関係性をあえて曖昧に描写しているからこそ、リアリティーの高い作品になっています。
アメリカの対外戦略において、ウィルソン主義というものがあり、一言で言えばアメリカの民主主義を世界中に広め平和に貢献するというもの。(モンロー主義は、孤立主義でウィルソン主義と対極に位置するイデオロギー。)
しかし、実際は「敵の敵は味方」戦略がアメリカの基本の外交姿勢であり、アメリカにとって最大の敵は共産主義で、共産主義の芽を潰す為なら手段を選びません。民主主義と相対する独裁国家ですら、アメリカにとっては共産主義を潰す手段である。
中東において親米独裁国家という、非民主主義でありながらアメリカと経済的に深く繋がっていた国家が存在していた理由の一つは、独裁者がイスラム勢力を弾圧してくれるから。
チリ・軍事クーデターは似たようなパターンで、左翼的に傾きつつあったアジェンデ政権を転覆させる為にCIAが軍事クーデターを画策し、ピノチェト率いる軍事勢力が、チリの政権を掌握したという背景があります。
軍がクーデターを起こし、政権を掌握するという事件には、CIAの思惑が絡んでいる事が多く、親米独裁という、民主主義と相対する独裁国家がアメリカと繋がっている背景でもあります。実態は、もっと複雑で、宗教的対立や石油資本と現地政府の癒着などを挙げればキリがなく、全体の状況を理解している人は、ほんの一握りでしょう。(ジョージ・クルーニー、マット・デイモン出演のシリアナという映画は、中東諸国とアメリカの複雑な繋がりを描いた名作です。)
ミッシングでは、軍事クーデターにCIAが関わっていた事を曖昧ながら描いている点がリアルで、アルゴの場合は、イランにおける親米のパーレビー王朝が、イスラム革命によって崩壊する時点からシナリオが始まるので、どうしてもアメリカ側から見たイラン・イスラム革命という作品にならざるをえない。
イラン政府がアルゴの内容を批判するというのも、アメリカ政府の都合によってイラン国内が蹂躙されたという認識が存在するからです。実際の事件を映画化した場合、製作側の意図や政治的プロパガンダが含まれる事は避けれらない為、イラン側の批判も一理あると言えます。
コスタ・ガブラス監督は、他にもZ、戒厳令、告白といった三部作で、実際に起きた政治的に有名な事件を実写化する監督なので、もしアルゴを見て政治や外交に興味を持たれた方は、ミッシングやZ等の作品をオススメします。
イランから見たアルゴに対する反論的映画は、どのような内容なのかも目が離せません。
そんなアルゴ、メタルギアシリーズの小島秀夫さんの2012年で一番面白かった映画と評価するだけあります。ライジングより面白・・・ry
イラン・イスラム革命勃発によって、アメリカ大使館職員がイラン国内に取り残されてしまい、CIAのエージェントでトニー・メンデス扮するベン・アフレックが、カナダ人として映画撮影を装い、大使館職員を救出したという実際の事件を元に撮影されたアルゴ。
そんなアルゴをより深く理解するのにオススメな映画、コスタ・ガブラス監督の「ミッシング」をご紹介します。
ミッシングは、1973年のチリ、ピノチェト率いる軍事勢力がクーデターによって、アジェンデ政権を転覆させた事件を元に作られた作品です。
チリの軍事クーデターによって、アメリカ人青年のチャールズ・ホルマンという実在の人物が突然失踪し、その家族が失踪した息子の行方を追うが、そこにはCIAの思惑が見え隠れしていたという怖い怖いシナリオ。
映画の中では、息子の行方を必死に追う父親が、息子が失踪した件についてCIAが関わっているのではないかと勘付きます。しかし、劇中ではCIAが実際にクーデターに関わっていると視聴者の思わせる演出がありますが、本当にCIAが関わっていたのかは明確に描かれません。クーデターと、CIAの関係性をあえて曖昧に描写しているからこそ、リアリティーの高い作品になっています。
アメリカの対外戦略において、ウィルソン主義というものがあり、一言で言えばアメリカの民主主義を世界中に広め平和に貢献するというもの。(モンロー主義は、孤立主義でウィルソン主義と対極に位置するイデオロギー。)
しかし、実際は「敵の敵は味方」戦略がアメリカの基本の外交姿勢であり、アメリカにとって最大の敵は共産主義で、共産主義の芽を潰す為なら手段を選びません。民主主義と相対する独裁国家ですら、アメリカにとっては共産主義を潰す手段である。
中東において親米独裁国家という、非民主主義でありながらアメリカと経済的に深く繋がっていた国家が存在していた理由の一つは、独裁者がイスラム勢力を弾圧してくれるから。
チリ・軍事クーデターは似たようなパターンで、左翼的に傾きつつあったアジェンデ政権を転覆させる為にCIAが軍事クーデターを画策し、ピノチェト率いる軍事勢力が、チリの政権を掌握したという背景があります。
軍がクーデターを起こし、政権を掌握するという事件には、CIAの思惑が絡んでいる事が多く、親米独裁という、民主主義と相対する独裁国家がアメリカと繋がっている背景でもあります。実態は、もっと複雑で、宗教的対立や石油資本と現地政府の癒着などを挙げればキリがなく、全体の状況を理解している人は、ほんの一握りでしょう。(ジョージ・クルーニー、マット・デイモン出演のシリアナという映画は、中東諸国とアメリカの複雑な繋がりを描いた名作です。)
ミッシングでは、軍事クーデターにCIAが関わっていた事を曖昧ながら描いている点がリアルで、アルゴの場合は、イランにおける親米のパーレビー王朝が、イスラム革命によって崩壊する時点からシナリオが始まるので、どうしてもアメリカ側から見たイラン・イスラム革命という作品にならざるをえない。
イラン政府がアルゴの内容を批判するというのも、アメリカ政府の都合によってイラン国内が蹂躙されたという認識が存在するからです。実際の事件を映画化した場合、製作側の意図や政治的プロパガンダが含まれる事は避けれらない為、イラン側の批判も一理あると言えます。
コスタ・ガブラス監督は、他にもZ、戒厳令、告白といった三部作で、実際に起きた政治的に有名な事件を実写化する監督なので、もしアルゴを見て政治や外交に興味を持たれた方は、ミッシングやZ等の作品をオススメします。
イランから見たアルゴに対する反論的映画は、どのような内容なのかも目が離せません。
2013年4月17日水曜日
スピルバーグ最新作「リンカーン」を観る前にオススメの映画「アミスタッド」
去年全米公開され、今年のアカデミー賞で最多12部門ノミネートされ、主演のダニエル・デイ=ルイスが史上3度目の主演男優賞を獲得したスピルバーグ最新作リンカーン。
スピルバーグは、未知との遭遇やE.TといったSF映画から、ミュンヘンやリンカーンといった政治的・人道的に深いテーマを焦点を当てたり、プライベート・ライアンや戦火の馬といった戦争映画まで、恋愛映画以外なら、いかなる作品でも作れる世界最高峰の巨匠である。(恋愛下手?)
新作リンカーンが今月19日から全国公開(遅すぎる・・・)ということで、スピルバーグ作品で黒人奴隷に焦点を当てた「アミスタッド」を紹介します。(アミスタッドの解説はこちら→ネタバレ注意)
アミスタッドとは、アフリカの奴隷を拉致して、アメリカ大陸に連れて行く時に使われた船の名前を指し、この作品は実際に合った事件を映画化。
本作のシナリオは、アフリカ人が奴隷として捉えられ、アミスタッド号で白人から拷問されていたが、航海の途中でアフリカ人が反撃した。漂流後のアメリカ本土で捉えられ、自由を勝ち取るために裁判で争うというもの。
映画「リンカーン」は、アフリカから連れて来られた黒人奴隷を解放する為に修正憲法13条を議会で可決させる為に、民主党議員を懐柔するプロセスに焦点が当てられている。「アミスタッド」は、第6代合衆国大統領のジョン・クインシー・アダムズ(アンソニー・ホプキンス)も登場しており、重要な役割を果たしているため、実質的に「アミスタッド」の続編が「リンカーン」とも解釈できるだろう。
アミスタッドは1997年公開で、タイタニックと同じ年に公開されているので、目立たなかったとも言われるが、歴史的事件を詳細に再現したということで評価が高い作品。尚且つ、「リンカーン」とも類似性があるので、一度見る事をおススメ。
「リンカーン」は、スピルバーグ作品で最も政治的な映画である。政治と宗教、歴史的背景を知らないとダニエル・デイ=ルイスの演技は堪能出来ても、作品の真意は分からない人もいると思われるので、「リンカーン」を観る前に頭に入れるべきポイントを3つ解説します。
①現在のアメリカ政治情勢を反映している。
現在の民主党オバマ政権において、上院は民主党、下院は共和党という事で、日本で言うねじれ現象が発生しており、財政の崖問題や銃規制問題等で利害が対立し、法案審議が進まない状況が、そのまま「リンカーン」で反映されている。
②南北戦争当時、奴隷制を解放しようとしたのは共和党。奴隷制を支持したのは民主党。
現在のアメリカ政治では、民主党がリベラルで中絶や同性愛を擁護していくという立場。共和党は、キリスト教福音派が支持母体であったので中絶や同性愛は反対で保守的。現在の政治では、南北戦争当時と党のイデオロギーが逆転している。ある意味、現在の共和党に対する皮肉とも取れる。
③奴隷制を支持する南部はキリスト教右派の支持が強く、キリスト教を根拠にして黒人奴隷制を支持していた。
これは、様々ない解釈があるとは思いますが、キリスト教を信じる人程、黒人に対する差別意識が強かったという意味。実際のシーンで、「神は、黒人を白人より下等な生き物として生み出したため、白人と黒人は同等ではない」というセリフがあります。
とりあえず、「リンカーン」を見に行く際は、この3つのポイントを頭に入れないと、全く理解できないと思います。必要最低限の知識ですので、映画見に行く前に調べたり、パンフレット購入して後から確認すると良いかなと。
映画のリンカーンは、黒人奴隷解放の為の善人のような描き方になっており、これは映画の政治的メッセージを強調する為の脚色と思われます。映画の中に出てくるリンカーンのいくつかの台詞は、製作者側の意図をそのまま反映したものでしょう。(実際リンカーンは、奴隷制廃止論者とも、白人至上主義のイデオロギーも持っていたと言われます。)
具体的に伝えたい政治的メッセージとは、「目的が正しければ、どのような行為であっても、歴史が、その行為を正当化する」といったところです。実際に見れば、意味が分かると思いますし、アメリカ史に詳しい方なら、すぐピンと来ると思います。
上記の政治・宗教的解釈は、筆者独自のモノですので、解釈が間違っている等はあるかもしれませんので、ご参考までに・・・。(個人的な解釈は、こちらの記事で)
個人的に一番の見せ場は、今話題の東進スクール国語教師、林修センセーのギャグ
「いつやるか、今でしょ」を彷彿とさせるシーンがあります。ダニエル・デイ=ルイスが、それをやっているところ、筆者は笑いました。今なので「Now」というセリフがヒントです。
もうYouTubeに、そのシーンが上がってますので、最後にどうぞ。
林修センセー版「今でしょ」
ダニエル・デイ=ルイス版「Now Now Now」
林修センセーの「今でしょ」ネタは、スピルバーグがダニエル・デイ=ルイスに真似させて、パロディとして使ってるんですね、分かります。
スピルバーグは恋愛下手なのか、あまり恋愛映画取ってません。リンカーンもデートムービーとして見に行くと、彼女がパリス・ヒルトンみたいな人であれば、映画見終わって感想聞いても、「ワタシ、バカだから分からないわよ」って言われる可能性大ですので、ご注意ください。
スピルバーグは、未知との遭遇やE.TといったSF映画から、ミュンヘンやリンカーンといった政治的・人道的に深いテーマを焦点を当てたり、プライベート・ライアンや戦火の馬といった戦争映画まで、恋愛映画以外なら、いかなる作品でも作れる世界最高峰の巨匠である。(恋愛下手?)
新作リンカーンが今月19日から全国公開(遅すぎる・・・)ということで、スピルバーグ作品で黒人奴隷に焦点を当てた「アミスタッド」を紹介します。(アミスタッドの解説はこちら→ネタバレ注意)
アミスタッドとは、アフリカの奴隷を拉致して、アメリカ大陸に連れて行く時に使われた船の名前を指し、この作品は実際に合った事件を映画化。
本作のシナリオは、アフリカ人が奴隷として捉えられ、アミスタッド号で白人から拷問されていたが、航海の途中でアフリカ人が反撃した。漂流後のアメリカ本土で捉えられ、自由を勝ち取るために裁判で争うというもの。
映画「リンカーン」は、アフリカから連れて来られた黒人奴隷を解放する為に修正憲法13条を議会で可決させる為に、民主党議員を懐柔するプロセスに焦点が当てられている。「アミスタッド」は、第6代合衆国大統領のジョン・クインシー・アダムズ(アンソニー・ホプキンス)も登場しており、重要な役割を果たしているため、実質的に「アミスタッド」の続編が「リンカーン」とも解釈できるだろう。
アミスタッドは1997年公開で、タイタニックと同じ年に公開されているので、目立たなかったとも言われるが、歴史的事件を詳細に再現したということで評価が高い作品。尚且つ、「リンカーン」とも類似性があるので、一度見る事をおススメ。
「リンカーン」は、スピルバーグ作品で最も政治的な映画である。政治と宗教、歴史的背景を知らないとダニエル・デイ=ルイスの演技は堪能出来ても、作品の真意は分からない人もいると思われるので、「リンカーン」を観る前に頭に入れるべきポイントを3つ解説します。
①現在のアメリカ政治情勢を反映している。
現在の民主党オバマ政権において、上院は民主党、下院は共和党という事で、日本で言うねじれ現象が発生しており、財政の崖問題や銃規制問題等で利害が対立し、法案審議が進まない状況が、そのまま「リンカーン」で反映されている。
②南北戦争当時、奴隷制を解放しようとしたのは共和党。奴隷制を支持したのは民主党。
現在のアメリカ政治では、民主党がリベラルで中絶や同性愛を擁護していくという立場。共和党は、キリスト教福音派が支持母体であったので中絶や同性愛は反対で保守的。現在の政治では、南北戦争当時と党のイデオロギーが逆転している。ある意味、現在の共和党に対する皮肉とも取れる。
③奴隷制を支持する南部はキリスト教右派の支持が強く、キリスト教を根拠にして黒人奴隷制を支持していた。
これは、様々ない解釈があるとは思いますが、キリスト教を信じる人程、黒人に対する差別意識が強かったという意味。実際のシーンで、「神は、黒人を白人より下等な生き物として生み出したため、白人と黒人は同等ではない」というセリフがあります。
とりあえず、「リンカーン」を見に行く際は、この3つのポイントを頭に入れないと、全く理解できないと思います。必要最低限の知識ですので、映画見に行く前に調べたり、パンフレット購入して後から確認すると良いかなと。
映画のリンカーンは、黒人奴隷解放の為の善人のような描き方になっており、これは映画の政治的メッセージを強調する為の脚色と思われます。映画の中に出てくるリンカーンのいくつかの台詞は、製作者側の意図をそのまま反映したものでしょう。(実際リンカーンは、奴隷制廃止論者とも、白人至上主義のイデオロギーも持っていたと言われます。)
具体的に伝えたい政治的メッセージとは、「目的が正しければ、どのような行為であっても、歴史が、その行為を正当化する」といったところです。実際に見れば、意味が分かると思いますし、アメリカ史に詳しい方なら、すぐピンと来ると思います。
上記の政治・宗教的解釈は、筆者独自のモノですので、解釈が間違っている等はあるかもしれませんので、ご参考までに・・・。(個人的な解釈は、こちらの記事で)
個人的に一番の見せ場は、今話題の東進スクール国語教師、林修センセーのギャグ
「いつやるか、今でしょ」を彷彿とさせるシーンがあります。ダニエル・デイ=ルイスが、それをやっているところ、筆者は笑いました。今なので「Now」というセリフがヒントです。
もうYouTubeに、そのシーンが上がってますので、最後にどうぞ。
ダニエル・デイ=ルイス版「Now Now Now」
林修センセーの「今でしょ」ネタは、スピルバーグがダニエル・デイ=ルイスに真似させて、パロディとして使ってるんですね、分かります。
スピルバーグは恋愛下手なのか、あまり恋愛映画取ってません。リンカーンもデートムービーとして見に行くと、彼女がパリス・ヒルトンみたいな人であれば、映画見終わって感想聞いても、「ワタシ、バカだから分からないわよ」って言われる可能性大ですので、ご注意ください。
マーガレット・サッチャー逝去、時は変わった「ゲーム・チェンジ」
サッチャー逝去のニュースと共に、「The iron lady」(邦訳:マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」が取り上げられ、サッチャー追悼のアイコン的映画になっている。
その中で、今回は「ゲーム・チェンジ 大統領選を駆け抜けた女」をご紹介します。WSJ等の記事でも、「鉄の女の涙」が取り上げられ、日本の政治家や有識者でも多数言及されているからこそ、この映画を取り上げる。
本作の主人公は、サラ・ペイリン(ジュリアン・ムーア)。2008年の米大統領選において、共和党の大統領候補であるジョン・マケインが副大統領候補として指名した女性政治家である。サラ・ペイリンは当時アラスカ州知事で、民主党のオバマ候補との競争で、不利な大統領選を強いられるマケイン候補の秘密兵器として突然副大統領候補に指名された事は有名な出来事だ。
ペイリンが出現した背景には、レーガン政権から続いた共和党の支持母体のキリスト教連合(同性愛や中絶に反対するカトリック・プロテスタント福音派、モルモン教等の勢力)が、ブッシュ政権のイラク戦争や、有名伝道師の性的スキャンダルによって崩壊したため、ペイリンを副大統領候補にすることによって、共和党陣営が大統領選の巻き返しを期待したという面がある。
しかし、選挙戦が進むにつれて、あまりに過激な右翼的発言や基本的常識の欠如が明らかになり、余計共和党陣営の首を絞める結果にはなったのだが・・・。
本作では、オバマ陣営に苦戦するマケイン陣営スタッフの苦悩が詳細に描かれている。マケイン陣営は、最初からオバマ陣営に勝てない事を分かっており、最終手段としてサラ・ペイリンを選ばざるをえなかったという点が良く分かる映画である。
ペイリン自体がどれほど危なっかしい政治家だったのか。本作で描かれるペイリン描写は以下の通り
①9.11同時多発テロの真犯人はイラクであったと認識。アメリカの対外戦略を知らない。
②FRBを知らず経済政策について一切知識がない。
③歴史を知らない。(興味なかった?)
④討論会やインタビューで、基本的知識・認識不足を露呈する。
他にも、アラスカのとなりにロシアが存在するといったボケ(ジョーク?)まで披露し、有権者の失笑を買ってしまう。最終的には選挙対策チーム自体が崩壊してしまうという笑えない状況・・・。
結局、どんな手を使っても共和党陣営は選挙に勝てなかったのだが、もしマケイン・ペイリン陣営がオバマ陣営に勝ったとしたらどうなるか?。
ペイリンは、おそらくマーガレット・サッチャーになろうとしただろう。マーガレット・サッチャーは、歴史的評価が分かれる政治家で、労働者側の立場から言えば憎きサッチャー以外何者でもないが、資本家側から見れば有能で英国病を克服した歴史的に偉大な女性リーダーとの評価。
サッチャーが生まれた背景は、英国病によって経済が疲弊していた状況で、共産主義に対するイデオロギー闘争の闘志としてのアイコンを、民主主義勢力が欲していた面がある。サッチャーの先見性自体は偉大であり、評価されるべきものだ。詳しくは国際ジャーナリストの小西克哉氏のサッチャー論を参照。サッチャリズムとは、明確な敵対勢力が存在してこそ、効果を発揮する。当時のイギリスで言えば、肥大化する労働組合や冷戦下における共産主義といったものだ。
現代は、資本主義側から見て明確な敵対勢力が存在しないので、サッチャリズムが現代において効果的か疑問である。むしろ、金融業界の暴走による経済崩壊、軍事産業と石油産業の利権に為に戦争が勃発し、無実の市民が犠牲になる、巨大資本の発展途上国搾取といった負の側面が大きくなってきた。
新自由主義的イデオロギーは、共産主義の対等によって極端な方向に向かっていた世界経済の秩序を調整したという功績は誰もが認めるだろう。しかし、明確な対立軸が存在しない現代では、新自由主義が世界経済の秩序を歪めつつあるのだ。
サラ・ペイリンは、どちらかと言えばイデオロギーありきの政治家であり、キリスト教的理想を政治に追及しようとしていたと思われる。サッチャーのアイコンを自分に重ねて、現実的に実現可能な政策か考慮せず、我が道を突き進んでいただろうというのが本作を見れば分かる。
イデオロギーとは理想そのものであるが、理想ありきでは政治はなりたたない。宗教は理想への追求であるが、政治とは現実との妥協によって進んでいく。共産主義が崩壊した理由と言っても過言ではない。
サッチャーは一般庶民から上流階級へ上がった知性の高い女性であり、その先見性が冷戦終結に貢献したが、もしサラ・ペイリンが2008年の大統領選で勝利し、米副大統領になっていたらどうなっていたのであろうか。今考えてみれば恐ろしいものである。
The question we ask today is not whether our government is too big or too small, but whether it works (私たちが問うべきは、大きな政府か、小さな政府のどちらを選ぶべきかではない。政府が政府としての役割を果たすかどうかである)by Barack Obama's Inaugural Address
新自由主義ありきの政治は、もう現代社会では成り立たない。理想ありきではなく、徹底的な現実主義者こそ、今の世界に必要なリーダーであることを痛感させられる映画である。
※筆者は、完全にオバマ政権を支持するわけではない。ただし、中絶や同性愛を政治的論争に使う政治家は全面的に支持しないという立場である。また資本主義を容認しつつ、新自由主義的アプローチには反対を唱えるという中途半端な政治スタンスです。
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