2013年6月4日火曜日

誰も知らない悲劇を描いた「THE INVISIBLE WAR」

橋下市長の慰安婦問題が未だに収まりませんね。選挙が近いんだから、もう少し体裁というものを考えた方がいいと思うんですが、未だにツイッターで発狂しているようです。

挙句の果てにはオスプレイの訓練を大阪でやりましょうとまるでソフトバンクの孫社長ばりのハリキリ具合。そのままいくと、ハリキリすぎて日本維新の会の首脳陣が腹切りを余儀なくされる気がするので、不安で仕方がない日本維新の会にお勧めのドキュメント映画、「The Invisible War」でも見て、欧米の橋下バッシングに対する対策でも考えたらいかがでしょうか。

 「The Invisible War」が焦点に当てるのは、女性の社会進出、軍隊の兵士として女性が入隊するが、男性兵士のレイプ被害に苦しむ現状である。

沖縄における米兵の犯罪は後を絶たない現状に腹を立て、橋下市長は在日米軍の司令官に、日本の風俗を合法的に使って男性兵士の性的欲求を発散すべきといったそうですが、この映画見ると、そんな悠長な事を言ってられる状態ではない事が分かる。というより、米軍自体が女性兵士のレイプ被害に頭を抱えている状況で、橋下発言はブラックジョークにも程があるってレベルなのだ。

除隊後は、普通の女性として結婚し、今では愛する夫と娘がいる幸せな女性。しかし軍所属時、男性兵士にレイプされていた経験を持っていたとしたら、どう思うか。その女性を心から愛する男性なら、耐えられない過去に他ならないだろう。

女性の社会進出が進んで、米軍に占める女性の割合は全兵士中の1割強。日本の自衛隊に比べれば、かなり多い数字であるが、未だに女性がマイノリティである。どの部隊でも、自分一人が女性で、他のメンバーは全て男性というのもザラにある。そして、不意に味方である男性兵士からレイプそして輪姦される。インタビュー中の女性は、自身がレイプされた経験を語るときは、涙目で思い出したくない過去を視聴者の前でさらけ出す。

「 彼は私をレイプしたの・・・」
「私はあの男に5回レイプされたわ。」
「 コンクリートの上で、力づくで犯されたわ。」

1991年の議会証言では、 20万人の女性兵士にレイプされたとの試算まである。しかし、試算は自身のレイプ経験を報告していない女性は含まれていないので、この数倍の数が実際にレイプされたと思われる。

最近の映画では、「ウィンターズ・ボーン 」で、生活に困窮した主人公(ジェニファー・ローレンス)が生活費を稼ぐ為に入隊志願をするという描写があったが、女性が軍隊を志願する理由は様々だ。経済的な理由もあれば、父親が軍人であったので、同じ道を進んだ女性もいる。

軍隊に入隊する前に、一切男性経験を持たず、入隊後にレイプされることで初体験を経験する女性の告白は衝撃的であった。特に、その経験を軍人であった父親に告白し、父親は残酷な現実に直面するのだ。

そういう厳しい現実に直面する女性兵士は、泣き寝入りせざるをえない。もし、自分がレイプされた事を報告しようとすれば、降格や、奨学金免除の待遇を失う可能性があるからだ。閉ざされた空間の中では、不正を揉みつぶそうとする権力に女性兵士は対抗する手段がない。予め試算された被害者の総数を正確に把握できない理由でもある。実際、除隊後に レイプされた経験を告白するしかないのが現状なのだ。

 レイプされた経験から、潰れていく女性も後を絶たず、ストレスからドラッグに浸り、除隊後にホームレスになった女性の4割はレイプ被害を受けているという。これでは、女性が軍隊に入隊する意味がない。まるで、女性兵士が軍内売春婦のような扱いである。レイプされた時の心の苦しみは、PTSDとして一生女性の人生に付きまとう。

レイプ問題は、軍隊という特殊な組織に深く根付いた問題である。男性優位の権力構造や、実際海軍に入隊する新兵の15%は、入隊前にレイプ加害者になったというデータもあり、常人に比べて性的衝動を抑えられない人が、軍隊という閉ざされた場所に閉じ込められれば、マイノリティで非力な女性がレイプ被害に合うのは自明の理でもあった・・・。

結局、レイプ加害者は罰せられる事も殆どない、このドキュメント映画の中では・・・(例外もある)。軍当局は。レイプ被害を完全に排除できるとも思っていないし、臭いものには蓋をしたいだけだった。レイプ被害を防ぐには、軍隊に入隊する人間を人格的な面から評価し、危険な人物をふるい落とす事と、レイプに対する罰則を設けて、実際にレイプ被害を受けた女性兵士がきちんと告発出来るシステムを整える必要があるが、米軍にそこまで出来るだろうか。

軍隊上層部は、軍内のレイプ問題の解決に消極的で、最近になってオバマ大統領が「国家の恥」と糾弾するようになったが、最初にレイプ問題が報道されてから 20年近く経っても状況の改善どころか、悪化していったのだ。途中でイラク戦争が発生したため、おそらくこの時期はレイプ被害が悪化したと思われる。戦争を行うにも兵隊が足りないため、入隊基準を下げて本来軍隊に入隊できないレベルの男性兵士が増えた。また実際に兵士が戦場に赴いて戦闘に参加したため、平常時とは比べ物にならないほどのストレスが兵士を襲っていたはずだ。

最近になって、大統領が軍内のレイプ問題解決に乗り出したという事は、共和党政権って一体何をやっていたのか。キリスト教福音派の支持を受けていて、婚外交渉を許さない人々から支持を受けた政党なら、共和党こそレイプ問題の解決に取り組むべきだと思うのだが・・・。

ドキュメントの終盤になると、実際にレイプ被害を受けた女性たちが勇気を振り絞って不正義と勇敢に戦う。女性としての権利を確立し、レイプ加害者が犯した罪は、決してInvisibleではない事を証明するために。




橋下市長の慰安婦問題を過大解釈して、他国の軍隊について性的スキャンダルを批判するのも実際は正当で、米軍からすれば図星な点も否めない。かといって、橋下市長を擁護するつもりもない。まずは、アメリカを批判するなら、こういう映画を予め見ておくべきだ。

慰安婦問題に代表される軍隊の性的スキャンダルは、どの国も抱える共通の悩みである。だからこそ、発言内容に配慮しなければ、無用な反発を生むだけである。

橋下市長殿、ツイッターで長文書いている時間があるなら、英語の勉強も兼ねて「The Invisible War」をご覧ください。Youtubeで探せば見つかるかもしれないですし。。。

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