2013年5月12日日曜日

レーガン伝記ドキュメント(下)



 レーガン伝記ドキュメント(下)。いきなり、国民の不満が高まります。経済が悪化するわ、軍事拡張政策を取り続けるから財政が悪化するわで、政権危機に直面します。

 レーガンはソ連を憎んでいた。恐れてはいなかった。だから打倒ソ連を実現するために、軍事費を増やし続けた。そして、手段を選ばなくなるのだ。

 ポーランドの民主化運動では、連帯を支持して、ソ連の勢力弱体を図る。ヨハネ・パウロ2世と会談し、レーガンは神の意志を受け取るのだ。ポーランドを民主化させる為に、CIAの画策で政府を弱体化させ、連帯を全面的に支援する。ポーランドの民主化によって、東欧諸国も追随すると信じていた。

 アフガンでは、カーター政権から続いた対ソ連対抗作戦を続け、後にタリバンの元になる勢力に対する支援を続けた。

 中南米では、ニカラグアのサンディニスタ政権を倒すため、CIAが兵士を教育してソ連の影響力排除に動く。自由の為の戦いを、アメリカから離れた場所でも続けるのだ。

 そこまで大胆な軍事政策を行ったレーガン、本人はシャイで孤独な人間だった。側近からすれば、レーガンとそれ以外の世界には、仕切りが存在するようだったという・・・。自由を実現する正義の戦いを実行するには、自分以外の人間を信じる事は出来なかったのか。

 国民からも、核政策や軍事政策について批判が強まり、レーガンの共産主義狩りは暗雲が立ち込める。共産主義を倒す為に手段を選ばなくなり、レーガンの理想と、国民の意思に乖離が生まれる。

 核兵器廃絶を望む国民と、それを望まないレーガン。おそらく、彼は神のお告げを心から信じていたんだと・・・。そして、ソ連の核兵器の脅威に対抗するため、SDI(戦略的防衛構想)をぶち上げる。当時の科学者は、こんなの不可能だと主張してもレーガンはSDIに固執した。現実とファンタジーの区別が付かなくなっていたのだ。映画俳優として、常にヒーローを演じてきたツケが、ここで回ってくるのだ。これは、のちのゴルバチョフとの米ソ交渉で障害になってしまうのだ。

 ミサイルを宇宙からのレーザーで破壊する事で、ミサイルを時代遅れにしようとしたレーガン。今でも単なる空想であることは、北朝鮮の核ミサイル危機でも明らかだ。

 レーガンは、ソ連からすれば妥協不可能な要求を続け、事態は混乱を極める。結局目的は共産主義を撲滅するためです。自由を実現する為に、強いアメリカを実現する為に、レーガンは個人の信条を語り続けた。ソ連にとってレーガンはとてつもない強敵であった。

 途中核戦争によるアルマゲドンに危機に直面しつつも、アメリカ経済が回復することによって勢いを取り戻しつつあったレーガン、年には勝てなかった。テレビ討論でも、議論が混乱する場面を晒すようになり、年齢を心配されるようになっても国民からの支持は高かった。

 レーガンの人間性がにじみ出るのは、対イラン政策ですね。イラン・イスラム革命から、イラン・コントラ事件まで、動揺を隠せないのだ。記者会見でも、まともな回答が出来なくなり、精神的にも体力的にも追い詰められてしまう。ホワイトハウスで、側近と話しているレーガンの顔付きは青ざめていた。奥さんも顔を突っ込んでくるわで大変な状況になってしまう。

 でも最後は、人質解放の為に、イラン側に武器を打ったと公式会見で公表し、対イラン政策について過ちを認めたのである。大統領が在任中に対外政策について過ちを認めるというのは、前代未聞である。レーガンは、決して人間性が悪いわけではなかったのだ。

 しかし、ブラックマンデーからの経済崩壊、エイズの流行、格差の拡大などの国内問題がまたぶり返しても、神風のごとくゴルバチョフとの交渉が進み、冷戦は終結する。

 宗教を土台とした共産主義に対するレーガン十字軍の実績は、一応達成はされた。自由を実現する為に全身全霊を掛けて戦った男。国内の経済政策も、対外政策も根本的には俳優時代に培った反共産主義精神が元にあった。多少の政策に矛盾が生じても、自身の目的を達成する為に手段を選ばなかったのだ。その成果が、ポーランドから始まる東欧民主化革命の連鎖や、サンディニスタ政権の崩壊という形で報われる。ただし、アメリカには膨大は財政赤字という代償を支払う事になった。

 共和党のウィルソン主義の象徴こそ、ロナルド・レーガン。歴史的には、賛否両論で波乱を巻き起こし続けた理由が、何度も言うように共産主義を倒したかっただけという事に収束されるのだ。
ドキュメントを見る限り、決して悪人のようには見えない。他国との戦争は、レーガンにとって本当の正義だった。それが、他人にどう見られようと、後世がどう評価しようと関係なかった。

 レーガンの是非を問う事はしない。しかし、やり過ぎたかもしれない。打倒共産主義というイデオロギーが、レーガンの理性を奪っていったと言っても過言ではない。しかし、理想ありきの政治家など山ほどいるし、そういう人こそリーダーになる可能性が高いのも事実だ。

 しかし、レーガンがどうしても憎いと思う人はいるだろう。とりあえず、政治や経済をイデオロギーで語るのは止めた方がいい。結論ありきで、自分の主張にそぐわない相手に対してレッテル張りをして徹底口撃するような人を政治家として選ばない方が良い。決められない政治家より、本当は自分の思想ありきで決断を下してしまう政治家の方が恐ろしいし、のちに流血の悲劇が待っているのかもしれないと予感させるドキュメントであった。

 スピルバーグが「リンカーン」を映画化したんだし、ジョージ・ルーカスがSDI構想に絡めてレーガンを映画化してくれないものか。もしくは、映画俳優組合の委員長として、共産主義者と戦い、保守派として転身していく様を描くのも面白いだろう。ジョージ・クルーニーがレーガンを演じてくれたら、スーパーチューズデー以上のポリティカルサスペンスになる可能性もある。

 いやジョージ・クルーニーとレーガンって、顔付きちょっと似てる気がする。気のせいだ・・・

 



 


 

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