大変ひどいことになります。リンカーンは、南北戦争が長引くリスクを考慮しても、なぜ南部に対して妥協しなかったか、よくわかる映画「CSA ~南北戦争で南軍が勝ってたら?~」。
ブラックコメディなんですが、半分怖い映画です。詳しくは解説をどうぞ。スピルバーグの「リンカーン」でも、南北戦争を終結させるために修正憲法13条の可決を諦めるよう促される部分があるのですが、諦めなくて良かったと本当に思います。実際、黒人の権利が平等に扱われるのは公民権運動以降なので、南北戦争から100年近く掛かったことになりますね。
映画の「リンカーン」を見られた方は、南北戦争が長引いてもっと死者が出るおぞましい状況になったらどうするんだろう?、これ以上人が死ぬかもしれないのに、修正憲法13条に拘る価値があったのか?と思われたかもしれません(多少映画的な脚色もあると思います)。しかし、それは現代の過去の事実を知っている私達だから、そのような疑問が湧くのであって、当時の人々からすれば気が気ではなかったでしょう。
アミスタッドで描かれたように、アメリカの黒人奴隷は、アフリカ大陸から白人が拉致して、アメリカ大陸に連れて行きました。船で人間を家畜のように扱い、途中で多くの黒人が亡くなりました。足に重りを付けて、海に黒人奴隷を投げ落とすという描写も、アミスタッドには描かれていました。黒人奴隷を解放するために、アメリカの白人が南北戦争で死んでいくというのは、ある意味アメリカとしての、過去に行った残虐な行いに対する償いかもしれません。
南北戦争で死んでいった白人が、黒人奴隷制度について何か罪があるかと言えば、明確な罪はないのですが、黒人奴隷に対する不当を超えた野蛮な行為は、何があっても白人が止めなければならなかった。黒人は少数派であり、民主主義のルールでは、少数派に対する差別的な扱いをやめさせるには、大多数の力が必要になり、白人の意志がなければ、黒人奴隷制度の廃止はありえなかった。
その第一歩になったのが、リンカーンの奴隷解放宣言であり、修正憲法13条。黒人差別の撤廃のためには、憲法で国家権力に制約を与える必要があったと考えれば、南北戦争による犠牲は避けられなかったのかもしれない。「リンカーン」における憲法改正とは、少数派に対する差別に国家権力が加担しないよう制約を加えることだったと個人的に解釈しています。
そして、「CSA ~南北戦争で南軍が勝ってたら?~」では、キリスト教帝国として、黒人差別以外にもユダヤ人差別、有色人種も奴隷化、ナチスドイツとの微妙な関係、南米大陸の制圧等が描かれていましたが、まるでローマ帝国のようです。
とは言ってもブッシュ政権の政策は、まるでCSAのようでしたね・・・。これは現代アメリカ社会に対する皮肉ですが、キリスト教に対する解釈が歪んでしまうと、何でも神の大義名分の元、非人道的行為を正当化し暴走してしまう。
宗教とは難しいものです。人類の発展には宗教なしにはありえなかったが、社会の基盤が確立されると、宗教の教義を理想として大多数の人々が追及すると、少数派に対する差別や、他国に対する侵略行為など、流血の悲劇が待っている。スピルバーグの「リンカーン」を見た後は、ぜひCSAを見て、「もし南北戦争でリンカーンが敗北したら」という観点で見ると面白いと思います。
個人的には、「リンカーン」を楽しむためにお勧めの映画を挙げるとすれば
①アミスタッド
②ミュンヘン
③ミルク
④CSA
「リンカーン」について、感情移入しながら見たい方は是非、上記4作を先に見る事をおススメいたします。細かい歴史的事実は理解していなくてもいいのですが、製作者の意図を理解するためにはアミスタッドとミュンヘンを見るといいと思います。また個人的に「リンカーン」に最も近い映画がミルクだと思っているので挙げました。CSAは、多少解毒剤として見て頂ければ・・・
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