2013年5月16日木曜日

君の流す心の涙を慰めよう「レインメーカー」

 レインメーカーと聞いたら、プロレスラーのオカダカズチカの必殺技を思い浮かぶ方、いらっしゃると思います。金の雨を降らせる=お客を沢山呼んで大儲けという意味なんですが、これは、マットデイモン主演、フランシス・フォード・コッポラ監督の「レインメーカー」が由来です。

 金の雨を降らせる奴等とは、弁護士です。アメリカは訴訟社会で、企業相手にバンバン訴えて賠償金をふんだくる。強き者に味方する弁護士もいれば、弱き者に救いの手を差し伸べようとする弁護士もいる。

 誰を弁護するのであれ、結局報酬ありきなので、弁護士とはレインメーカーなのです。

 弁護士志望で希望に燃える若者であるルーディ(マット・デイモン)が、アメリカにおける弁護士業界の実態や、白血病に悩む男性に対して、保険会社が医療費を支払おうとしない現実に直面して、不正に立ち向かう法廷モノ映画です。シナリオはこちら

 こういう法廷モノの映画ってアメリカでは沢山あります。レインメーカーに近い映画といえば、ポール・ニューマン主演の「評決」とか、ジョン・トラボルタ主演の「シビル・アクション」とかですね。こういう映画は、主人公が飲んだくれのオヤジ弁護士や、バリバリのエリートだったりするのですが、レインメーカーは、希望に燃えるワカモノが酷い現実に直面し、人として成長していく物語。

 原作は、ジョン・グリシャムで、自身も弁護士であり、法廷モノの作品を数多く世に出し、何本も映画化されています。監督はコッポラで、地獄の黙示録やゴッドファーザーといった名作を世に送り出しました。

 マット・デイモンは、グッドウィルハンティングで名を成してから、社会派映画に出演し続けていますね。2000年代になってから、アメリカの中東政策や企業の癒着を克明に再現した「シリアナ」、イラク戦争における報道機関の欺瞞を極初する「グリーンゾーン」といった映画から、大企業の不正を告発(?)しようとする狂言者を演じた「インフォーマント」といった作品に出演しています。

 この映画では、善人は主人公だけで、被害者以外は全員金の事しか考えていません。保険会社を訴える原告側の弁護士軍団ですら、主人公の仲間は儲かりそうだから頑張るって感じで、保険会社は保身の為に弁護費用のお金に糸目を付けません。

 一番の弱者である白血病に悩まされる青年とその家族に大きな悲劇が訪れることによって、主人公が正義に目覚めるのです。白血病の治療には、骨髄移植が必要であるが、それにはお金が掛かる。アメリカでは国民皆保険が存在しないので、民間の保険会社に医療費を払うよう依頼するのですが、基本営利追求なので医療費を支払おうとしない。白血病という病気であれば、治療費が高く、治癒確立も低いから実験的医療であるとかイチャモンを付けて医療費請求を拒否し続ける。

 白血病を患った青年は、あえなく命を落とします。保険会社が医療費を負担してくれれば助かったのに、一切負担しようとしなかった現実に遺族は茫然自失・・・。自分たちにも、国にも、保険会社も本当にお金が無くて息子を救う手段がなければ運命を受けいれる事が出来る。しかし、実際は保険会社が医療費を支払おうとしないのだ。

 保険料はコツコツ徴収しておきながら、いざというときは医療費負担を拒否する。保険会社ではなく、ただの詐欺師ですが、国民皆保険が存在しないアメリカ、現実の民間保険会社も同じなのです。保険は、支払を拒否していたら成り立たないのに、ビジネスとしては最高です。安定的に保険料収入が入ってくるのに、支払を拒否しつづければ手元に莫大な資金が残ります。

 挙句の果てには、裁判において陪審員に、「この裁判結果が、アメリカの政府のあり方を変える。政府が、皆さんが払った税金を湯水のように使うようになるかもしれないから、良く裁判結果を考えて下さい。」とアピールする。まさに国民皆保険は、共産主義への第一歩というように。

 アメリカでも、数々の大統領が国民皆保険制度創設に挑んで来ました。しかし、ことごとく失敗していく。アメリカは経済的保守層の抵抗が強く、国民皆保険は共産主義であるというレッテル張りをすることによって、今までずっと、こういう状態が繰り返されてきた。

 キリスト教の国で、困っている人には手を差し伸べましょうと教えられているはずなのに、国内で困っている人を見捨て、誰も求めていない軍事攻撃はしっかりやるアメリカ。

 一体アメリカは何をやりたいのか良くわからない。共産主義狩りのために軍事侵攻や、イラク戦争などやらなければ、軍事費に使った税金を国民に振り向けることだってできた。レーガン政権の経済政策や、対外政策は打倒共産主義に拘り過ぎて、今から振り返れば軍事攻撃に使った金をアメリカ国内で使った方がマシだったのではないかと思う人もいるでしょう。タリバンやアルカイダは、アフガンに侵攻したソ連に対抗するために現地の兵士に武器を支援して、ソ連撤退後に野放しにしたため、9.11同時多発テロのしっぺ返しを喰らったりしたわけですから。

 国民の為に医療に税金を使わず、軍事攻撃には湯水のように税金を使うアメリカ。日本は真似をしてはいけません。TPPによって国民皆保険の崩壊が叫ばれている中、実際に国民皆保険が崩壊して民間保険会社が医療保険制度に関わるとどうなるか、「レインメーカー」を見れば分かります。

  民間保険会社は、絶対医療費を支払おうとしません。儲からないから。

 「これが現実だ、勇気があんならこの映画見て見ろ FU○K OFF」 by真壁 刀義



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