2013年5月31日金曜日

良心を捨てる覚悟を問う「スペル」

サム・ライム監督の最新作「オズ 始まりの戦い」、皆様見られたでしょうか。私は見てません。というより、サム・ライミと言えば、笑って怖いホラームービーというイメージしかないので、スーパーヒーローモノやディズニー系統の映画だと、サム・ライミのイメージとのミスマッチが頭の中に生まれてしまい、多分劇場で寝てしまうだろうとの判断があり、1,800円を劇場に捧ぐ勇気が無かった事を懺悔致します。

 そんなわけで、オズを見てサム・ライミ作品に持たれた学生の方にオススメしたい映画が「スペル」です。原題は「Drag me to hell」で、私を地獄に連れてってといったところでしょうか。

 すごく笑えて、ホラーなのにあんまり怖くないです。だけど、見た人すべてに、倫理的な問い掛けを投げかけています。

 あなたは、他人の人生をめちゃくちゃにしても平常心を保っていられるか、良心を捨てる覚悟はありますか?

 この映画の主人公は、銀行の窓口で貸出業務を担当する女性で、ゾンビに掴まれ喘ぎ声をあげている(叫び、悲鳴?)写真に写っている人です。

 主人公は、経済的に貧しい状況から一生懸命勉強して有名銀行に就職したという頑張り屋さんです。恋人もいて、結婚も近いという幸せな生活を送っていました。しかし、ある老婆に対するローン案件を担当していた事が悲劇を招きます。

 老婆はローン返済に苦しんでおり、主人公に返済期間の延長を依頼します。主人子は、上司に老婆の依頼内容を相談しますが、上司からは依頼内容を断るよう命令されます。自身の良心から、なんとか返済期間を延長出来るよう上司に交渉しますが、首を縦に振りません。仕方なく、主人公は上司の命令通り、老婆にローン返済猶予を断るのですが、これが老婆の怒りを買い、主人公に対して呪い(スペル)を掛けるのです。

 こういう物語は、主人公がハッピーエンドで終わるという結末になりにくいので、まあ悲しい終わり方になるんですが・・・。町山さん解説もどうぞ。

 この映画では、主人公が本当にいい人で、元々経済的に不利な状況で、名門大学を卒業し、銀行OLになったということで、視聴者は凄く共感できます。また結婚を考えている恋人の両親が、ちょっと差別的であったので、主人公に自分の育ちをバカにされたくないという気持ちが生まれて、恋人の両親に理解して貰いたいという気持ちが伝わってくるのです。

 ローン返済猶予をお願いする老婆に対して、自分の良心を捨てて職務を忠実に実行する主人公。責任は、上司の方が重いのですが、老婆は主人公の事しか知らないので、憎悪の行先は主人公になります。それ以外にも、出世を巡って醜い争いにも巻き込まれてしまうという・・・。

 コメディータッチのホラー映画でありながら、内容は私達が日々経験していることに近い。
他人の人生に関わるということは、覚悟が必要なのです。自分、もしくは自分の勤めている組織のために、他人の人生を犠牲するかもしれない。自分の人生を破壊されたと思ったら、復讐の対象になるかもしれない。

 人間とは、自分のために残酷になれるが、復讐のために冷酷になれるのです。映画自体は爆笑シーンの連続ですが、物凄く深いテーマが「スペル」にあります。特に金や名声に関わる憎悪は、どうしても血みどろな仁義なき戦いになっていくのです。

 職務を遂行していく事は尊いこと。その結果他人の人生を犠牲にする可能性もある。物事には良い面悪い面が表裏一体であり、主人公自体の行為を否定できないが、現実を見ると辛い映画です。残酷な現実を見ていると暗い気持ちになるので、残酷なシーンに笑いをいれることによって、少し冷めた視点から、冷静に物事をとらえることが出来ると思います。

 サム・ライミ監督の考え方等の背景は町山さんの解説が分かりやすいデス。

 オズのつぎはスパムで、いかがでしょう?

 

 

 

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