2013年4月18日木曜日

橋下大阪市長に贈る硬派なドキュメント「クライアント9 エリオット・スピッツァーの興亡」

現大阪市長であり、日本維新の会共同代表である橋下徹氏。歯に着せぬ発言で話題に事欠かない生粋の喧嘩屋であり、政治家としては異色なタイプである。

 最近は、ツイッターで持論を連投して、読者からは火病とか発狂してると言われ、あまり評価は良くないようだ。朝日系列の週刊誌と常に火花を散らしており、常に敵を見定めて口撃的に戦うのが橋下流なのか。

 橋下大阪市長の流儀についての是非は置いておいて、既存勢力に挑戦を挑もうとする人なら見て損しないであろうドキュメント映画「クライアント9 エリオット・スピッツァーの興亡」を紹介します。

 監督はアレックス・ギブニーで、ブッシュ政権下におけるロビイングの実態を暴いた(ジャック・エイブラモフの暴走)を告発した「カジノ・ジャック」や、リーマンショックは、金融業界・経済学会・政府の癒着こそが真因である事を糾弾する「インサイド・ジョブ」を製作したことで有名。


 本作は題名通り、エリオット・スピッツァーに焦点を当てたドキュメント。エリオットは、第54代ニューヨーク州知事で、かつてニューヨーク州司法長官を務めたエリートであり、司法長官時代はメリル・リンチやAIGといった金融機関の不正を追及して、正義の人とまで呼ばれた人物である。

 そのエリートでありながら、正義の象徴でもあったエリオットが、売春疑惑によってニューヨーク州知事を辞職せざるをえなくなり、転落していった事件についての疑惑を追及していく内容である。詳しい解説は、町山さんのキラキラの解説を参照ください。

 正義を追及し、不正と戦う現代のキリストのような存在が、エリオット・スピッツァーであるが、結局現代のキリストも性欲には勝てなかったのである。おそらく、普段から相当のプレッシャーに苛まれているはずで、重圧から逃れるには売春に逃げるしかなかったのであろうか。

 キリスト教の教義に七つの大罪という概念がある。人間を地獄に突き落とすと見なされた七つの欲望や感情を指す。その中で、エリオットを地獄に突き落としたのは色欲であった。色欲をコントロールできず、売春に逃げてしまい、その事実をニューヨークタイムズ紙が報道してしまい、当時ニューヨーク州知事であったエリオットは失脚してしまった。

 問題は、誰がニューヨークタイムズに情報をリークしたのか、どのような思惑が存在していたかである。出る杭は打たれるという言葉があるように、自分たちの利権に切り込もうとする人間がいれば、その人間を転落させようとする見えない力が必ず働くのである。

 特に金儲けを邪魔しようとする人間には、手段を選ばず排斥しようとするのが常であり、エリオットも、その例外ではなかったのだ。ロバート・ケネディーは暗殺されたが、現代では暗殺より、スキャンダル発覚による失脚の方が都合が良いのだろう。

 本作から学ぶべき教訓は、既存の利権や規制勢力に立ち向かう人間は、公明正大で不正は一切してはならない。特にオンナに手を出すのは、自分から揚げ足を取られる為のネタを作っているようなものだ。

 キリスト教における七つの大罪は、現代社会にも当てはまり、感情や欲望を制御しつつ、理性を絶対失わないよう狡猾に動かなければ、政治家として自らの理想を実現する事は不可能なのである。

 エリオットは、スキャンダル後CNNのキャスターになり、政治活動に復帰できたが、これは過去の功績が認められたからに他ならない。

 私は橋下市長を心から心配している。迂闊な言動で失脚するといった事態だけは避けられるよう気を付けて欲しいと思う。もちろん全ての政治家にも当てはまるが・・・


 キリストになれ、橋下市長。自治体を破綻させても、労働組合を敵に回してポピュリズムに走っても許される。しかし、不倫だけは許されないのだ。

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