2013年4月17日水曜日

スピルバーグ最新作「リンカーン」を観る前にオススメの映画「アミスタッド」

去年全米公開され、今年のアカデミー賞で最多12部門ノミネートされ、主演のダニエル・デイ=ルイスが史上3度目の主演男優賞を獲得したスピルバーグ最新作リンカーン。

 スピルバーグは、未知との遭遇やE.TといったSF映画から、ミュンヘンやリンカーンといった政治的・人道的に深いテーマを焦点を当てたり、プライベート・ライアンや戦火の馬といった戦争映画まで、恋愛映画以外なら、いかなる作品でも作れる世界最高峰の巨匠である。(恋愛下手?)

 新作リンカーンが今月19日から全国公開(遅すぎる・・・)ということで、スピルバーグ作品で黒人奴隷に焦点を当てた「アミスタッド」を紹介します。(アミスタッドの解説はこちら→ネタバレ注意)

 アミスタッドとは、アフリカの奴隷を拉致して、アメリカ大陸に連れて行く時に使われた船の名前を指し、この作品は実際に合った事件を映画化。

 本作のシナリオは、アフリカ人が奴隷として捉えられ、アミスタッド号で白人から拷問されていたが、航海の途中でアフリカ人が反撃した。漂流後のアメリカ本土で捉えられ、自由を勝ち取るために裁判で争うというもの。

 映画「リンカーン」は、アフリカから連れて来られた黒人奴隷を解放する為に修正憲法13条を議会で可決させる為に、民主党議員を懐柔するプロセスに焦点が当てられている。「アミスタッド」は、第6代合衆国大統領のジョン・クインシー・アダムズ(アンソニー・ホプキンス)も登場しており、重要な役割を果たしているため、実質的に「アミスタッド」の続編が「リンカーン」とも解釈できるだろう。

 アミスタッドは1997年公開で、タイタニックと同じ年に公開されているので、目立たなかったとも言われるが、歴史的事件を詳細に再現したということで評価が高い作品。尚且つ、「リンカーン」とも類似性があるので、一度見る事をおススメ。


 「リンカーン」は、スピルバーグ作品で最も政治的な映画である。政治と宗教、歴史的背景を知らないとダニエル・デイ=ルイスの演技は堪能出来ても、作品の真意は分からない人もいると思われるので、「リンカーン」を観る前に頭に入れるべきポイントを3つ解説します。


①現在のアメリカ政治情勢を反映している。
 
 現在の民主党オバマ政権において、上院は民主党、下院は共和党という事で、日本で言うねじれ現象が発生しており、財政の崖問題や銃規制問題等で利害が対立し、法案審議が進まない状況が、そのまま「リンカーン」で反映されている。

②南北戦争当時、奴隷制を解放しようとしたのは共和党。奴隷制を支持したのは民主党。

 現在のアメリカ政治では、民主党がリベラルで中絶や同性愛を擁護していくという立場。共和党は、キリスト教福音派が支持母体であったので中絶や同性愛は反対で保守的。現在の政治では、南北戦争当時と党のイデオロギーが逆転している。ある意味、現在の共和党に対する皮肉とも取れる。


③奴隷制を支持する南部はキリスト教右派の支持が強く、キリスト教を根拠にして黒人奴隷制を支持していた。

 これは、様々ない解釈があるとは思いますが、キリスト教を信じる人程、黒人に対する差別意識が強かったという意味。実際のシーンで、「神は、黒人を白人より下等な生き物として生み出したため、白人と黒人は同等ではない」というセリフがあります。


 とりあえず、「リンカーン」を見に行く際は、この3つのポイントを頭に入れないと、全く理解できないと思います。必要最低限の知識ですので、映画見に行く前に調べたり、パンフレット購入して後から確認すると良いかなと。

 映画のリンカーンは、黒人奴隷解放の為の善人のような描き方になっており、これは映画の政治的メッセージを強調する為の脚色と思われます。映画の中に出てくるリンカーンのいくつかの台詞は、製作者側の意図をそのまま反映したものでしょう。(実際リンカーンは、奴隷制廃止論者とも、白人至上主義のイデオロギーも持っていたと言われます。)

 具体的に伝えたい政治的メッセージとは、「目的が正しければ、どのような行為であっても、歴史が、その行為を正当化する」といったところです。実際に見れば、意味が分かると思いますし、アメリカ史に詳しい方なら、すぐピンと来ると思います。

 上記の政治・宗教的解釈は、筆者独自のモノですので、解釈が間違っている等はあるかもしれませんので、ご参考までに・・・。(個人的な解釈は、こちらの記事で)


 個人的に一番の見せ場は、今話題の東進スクール国語教師、林修センセーのギャグ
「いつやるか、今でしょ」を彷彿とさせるシーンがあります。ダニエル・デイ=ルイスが、それをやっているところ、筆者は笑いました。今なので「Now」というセリフがヒントです。

もうYouTubeに、そのシーンが上がってますので、最後にどうぞ。


林修センセー版「今でしょ」


ダニエル・デイ=ルイス版「Now Now Now」



 林修センセーの「今でしょ」ネタは、スピルバーグがダニエル・デイ=ルイスに真似させて、パロディとして使ってるんですね、分かります。

 スピルバーグは恋愛下手なのか、あまり恋愛映画取ってません。リンカーンもデートムービーとして見に行くと、彼女がパリス・ヒルトンみたいな人であれば、映画見終わって感想聞いても、「ワタシ、バカだから分からないわよ」って言われる可能性大ですので、ご注意ください。
  

0 件のコメント:

コメントを投稿