2013年4月28日日曜日

「キムジョンギリア」北朝鮮内情告発ドキュメント


 北朝鮮情勢が悪化して、ミサイル発射も近いという状況から多少落ち着いたのかと思ったら、アメリカ人を拘束したとのニュースが・・・。

 これもアメリカから譲歩を引き出すための駆引きでしょうが、こう着状況なのか、状況が悪化しているのかが分からない。

 北朝鮮情勢について勉強しようと思い、「キムジョンギリア」という映画を観ました。貧困に苦しむ北朝鮮国民、脱北者とのインタビューを通じて、現在の北朝鮮情勢がどれほどひどい状況かを告発するドキュメント。(日本公開時は2010年10月25日)

 最初ジャケットを見た時、ポール・トーマス・アンダーソ監督の「ザ・マスター」と似ているなと思いました。また「キムジョンギリア」というタイトルと、「マグノリア」が似ているので驚きましたが。

 キムジョンギリアとは、金正日の46歳誕生日に贈られた花の名前です。この花は、愛・平和・知恵・正義を象徴するそうです・・・。

 
 国内の貧困や、金一族の独裁に苦しむ北朝鮮国民。インタビューを受けた人達は、兵隊だった人や体制側の芸術演出に携わっていたピアノ弾きの方、何年も売春に従事させられていた女性等。

 体制維持の為に国民の犠牲を厭わない北朝鮮。徹底的な恐怖政治と、国民を貧困に陥れ外国の情報に触れさせず、反体制側と見なした市民を公開処刑する事により国民に恐怖を与え、反対勢力の芽を断つ。それでも貧困により生活出来なくなり、脱北の道を選んでいく人々。

 日本人が知っている事実がドキュメンタリーの大半ですが、序盤にインタビュワーが金日成を崇拝していたという言葉を聞くと戦慄が走ります。今まで体制側に教えられていた事が、外国に行くことにより全て嘘だったと気づいた等、衝撃的なインタビュー内容。

 詳しい内容はネタバレになるので避けますが、ドキュメントの間で日本が朝鮮半島を植民地化した過去について触れられています。時系列で行くと。

 1910年 日本が朝鮮半島を植民地化。
 1913年 金日成がキリスト教一家の元に生まれる。(彼の祖父はプロテスタントの宣教師)
 1919年~1940年 朝鮮の自由を求める戦士たちが日本軍に抵抗(教会の支援を受ける)
 1932年 金日成が抵抗軍に入り、それと同時に共産主義を採用する。
 1935年 日本軍が金日成を指名手配
 1941年 金日成、ソ連に赴く
 1945年 連合軍が日本軍に勝利し、ソ連と連合軍が38度線で領土分割
 1948年 金日成が朝鮮民主主義人民共和国をマルクス主義国家として建国
 
 その後は、朝鮮戦争が勃発したという歴史です。個人的に、金日成がキリスト教一家の元に生まれたというのは初耳でした。キリスト教について教育を受けているはずなのですが、無神論のマルクス主義に傾倒するということは、金日成自身に神を否定せざるをえない状況に追い込まれていたのか(詳しくは勉強中)。他にも、キリスト教団体が脱北に関わったりという描写もあります。

 ドキュメントでは、北朝鮮が独裁国家になったのは日本であると糾弾するような描写はありませんが、第二次世界大戦で、日本が連合軍に負けてソ連が現北朝鮮領土を支配したのが運命の分岐点となったのは間違いありません。ただ、アメリカは共産主義に傾いた国に対して。CIAがその国の軍に働きかけてクーデターを起こさせ、共産主義政権を倒すよう画策するのですが、北朝鮮は失敗例なのか。(ここも勉強中。)

 最も印象に残ったインタビュー内容ですが、「もし金正日が死ねば、混沌が待っている。」
これは、金正恩体制における核ミサイル危機を暗示していたのかもしれません。また、「金正日が死んでリーダーが変われば、北朝鮮に戻って国を再建したい」とも。

 自らが生まれ育った土地を離れなければならないという事は、悲劇そのものです。「この国を出よ」なんて煽る人もいますが、こういうドキュメントを見れば、とんでもない事だという事を実感できます。北朝鮮なら、言語が同じである韓国が隣にありますが、他に中国に脱出しても言語等様々な苦労が待っている。そして、脱北者自身、北朝鮮に残した家族を救うために行動したくとも、体制側の報復を恐れて何も動けない状況。

 日本とは考えられない程悲惨な状況になってしまった北朝鮮。国民は、飢えを凌ぐ事で精一杯でまともな教育も受けられない。国民を常に追い詰めれば、反体制勢力が生まれず体制維持に好都合なのです。そしてアメリカや中国からの譲歩を引き出すために、国民の犠牲を厭わない国家、それが北朝鮮。

 このドキュメントに近い映画は、ジンバブエ大統領のロバート・ムガベに土地を奪われた白人が、国際司法裁判所でムガベ大統領を訴えた「Mugabe and the White African」がありますね。こういうドキュメントを見て、独裁者と、その圧政に苦しむ国民の現状を認識する事が必要ではないか。

※世界最大の動画サイトで、「キムジョンゴリア」と英語の原題で検索してみてください。もしかしたら、アップされているかもしれません。


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