2013年4月20日土曜日

パーフェクト・ブルーを見て精神的ブルーになる人は要注意

珠玉のエログロアイドルサスペンスで今敏監督のデビュー作である「パーフェクトブルー」。ナタリー・ポートマン主演、ダーレン・アーロフスキー監督の名作「ブラック・スワン」に多大な影響(町山さん解説)を与えた事で有名。

 人間が、ある事柄に夢中になり全てを捧げていくが、その代わりに自分自身が崩壊していくという映画を撮り続けるダーレン・アーロフスキー監督なら、パーフェクトブルーネタを引用するのは当然ですね。リメイク権も買ったそうで、合法です。(買い叩き気味?)

 筆者がパーフェクトブルーを連想したのは、偶然あるAV女優のブログを見たからです。内容見れば分かりますが、本人の精神状態がかなり不安定・・・。AV女優として名前が売れてしまったため、男性から偏見があるんじゃないか?、そのせいで結婚できないんじゃないかという言葉は、男から見ても辛いですね。

 オトコは、性的欲求が溜まるとAVに逃げてしまうので、ある意味AV女優を志望して一生懸命演技をしてくれる女性がいるわけで、単なる自己責任として切り捨てずらいと思うのが筆者の心境でもあり、そういう心境の中でパーフェクトブルーを観ました。

 サスペンスなので、ネタバレは出来ませんが大まかな流れは、ある地方出身の女性が女優という夢を叶えるため上京し、まずはアイドルとして活動。徐々に女優の仕事が入ってくるが、その仕事自体は、女性にとって嫌な裸シーンやレイプシーンといったもので、際どい仕事をこなすうちに、主人公の精神が崩壊していくというものです。

 まるでブログで書かれた内容と、パーフェクトブルーで描かれるシナリオや主人公の精神描写は非常に似ている。それぞれの人によって背景が違えど、女優としての濡れ場を不特定多数の人に公開する事が、出演者にとってはどれほど精神的な重荷になるのかを痛感させられる。

 もちろんパーフェクトブルーは、サスペンス映画なので、終盤にどんでん返しが待っています。悲劇を乗り越えて、自分自身の弱さを乗り越えて真の女優として成長していくのですが・・・。

 この映画は、アイドルや女優になりたいという夢を持った女性や、アイドルに熱狂するファンの方々にとって、非常に辛い映画。主人公が自分の夢を実現する為に、裸を共用されても断る事が出来ず、単なる裸から強姦シーンまでやらされるという描写を、まともに見れる人は限られるかもしれません。

 また、アイドルから女優に転身し、過激なシーンを演じる主人公に対してのファンの反応も一見の価値がある。現代のアイドルファンの心理描写や行動を描き出しており、実際のアイドルではAKB48を連想してしまいました(筆者の感想)

 この映画は、主人公が精神的に崩壊していくだけではなく、主人公の周りの関係性を見事に得描き出しています。アイドル時代からファンであった人達以外では、他に挙げるとすれば・・・

 ①主人公を母親のように世話する女性マネージャーの献身性と、その狂気。

 ②主人公の足元を見て、裸や強姦シーンの仕事を斡旋する芸能事務所。

 ③夢を実現する為に過激なシーンを断れず、自分自身に対して嫌悪感が強くなっていき
  自分自身に、新たな自分を作ってしまう解離性障害

 ④主人公を心から心配する肉親の心境と、その肉親に辛いと言えない主人公の葛藤

 パーフェクト・ブルーは、夢を追いかけて自分の全てを捧げようとする一人の女性が、周りの人間関係や環境によって追い詰められ、その辛さから逃れるために自分の心の中に、新たな自分を作り出す。しかし新たな自我が、主人公の精神を破壊していくという破滅的悲劇を描き切っている。

 これは、一種の通過儀礼的映画であり、過酷な競争社会で自分の夢を叶えるには、弱い自分を乗り越えて、新たな強い自分に生まれ変わる必要がある事を示唆すると共に、人を単なる手駒としか考えていない人間に対する社会に対する批判とも解釈できるでしょう。

 本作で描かれる内容の是非はともかく、実際の世界で起こっていることであります。夢を追いかけて精神が崩壊してしまったアイドルや女優、誰もが気づいているが誰も見つめようとしない現実。

 主人公に感情移入しつつ鑑賞しても、主人公の周りにいる人間を観察するといった鑑賞でも、学べる事は沢山ある。芸能界という特異な環境における人間模様を知るために、パーフェクトブルーを見る事をオススメしたい。

 おそらくパーフェクトブルーは、見る人によって解釈が分かれる映画でしょう。単なるサスペンス映画として見るのではなくて、人間ドラマとしてのパーフェクトブルー。見終わった後、怖かっただけじゃなくて、ブルーになる人は何か心当たりがあるかもしれない。

 
 

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